12-1 フィルタ


ここでは発音が似ているものも含めて、混同し易かったり、言葉の違いのはっきりしにくいものについてまとめてみた。ただし正確な分類があるわけでないことが多いので、そういった点については街の音響屋に聞いてみた結果も併せて書いてある。

サンプリングをおこなった名古屋近辺では通じても、東京などの田舎に行くと通用しない場合もあるかもしれない点はご了承願いたい。

12-1-1 フィルタについて

    フィルタ(Filter)というのは日本語に訳すと「濾過器」となって、かえって訳が判らなくなる。まあ「何かは通さなくて、それ以外のものは通す」というものだ。コーヒーのフィルタは、水分を通して、コーヒー豆の粉を通さないものだし、エアコンのフィルタは空気を通して埃などを通さないものだ。音響の場合のフィルタは、ある一定の周波数を通したり通さなかったりする機能のことだ。

    フィルタの多くは、積極的な音作りというよりも、「不要な音を消す」という使い方がほとんどで、音作りの面で積極的に活躍するたぐいのものではないけど、(よって単体のエフェクタとしての「フィルタマシン」というのは、音響関係では見たことがない)イコライザ以上にプロの耳の見せ場でもある。





12-1-2 ハイパスフィルタ

    一番よくお目にかかるフィルタが「ハイパスフィルタ」だな。これは読んで字の如くハイ(高音)をパス(通過させる)フィルタ。だから逆の言い方をするとローカットフィルタなのだ。どっちにせよそのままではながったらしいので、普通はHPFとかLCFと省略して表す。低音を減少させるものなのだからLCFのほうがわかりやすい気がするけど、最近はHPFと表示されることのほうが多い。

    HPF以外の表示はLCFのほかに「HP」「FIL」「/ ̄」などや、減少させはじめる周波数(カットオフ周波数)の表示、例えば「100Hz」や「100」などの表示もある。またHPFは

    1. スイッチのオンオフ式のもの(カットオフ周波数は固定)
    2. つまみによりカットオフ周波数を連続可変出来るもの(この場合HPFがかかりっぱなしになってしまうので、つまみを左に回し切った状態でのカットオフ周波数は、20Hz以下の可聴周波数帯外になっている。)
    3. その2つを備え、スイッチでオンオフを、つまみでカットオフ周波数を決めるもの。(この場合のオンオフスイッチはイコライザーのスイッチと兼用になっているものもある)

    の3種類がある。

    その辺にいた音響屋に聞きました。
    Q  HPFの事をなんと呼びますか?
    ハイパス
    ローカット
    6名■■■■■■
    5名■■■■■

    これははっきりと別れたな、要はぢぢいがローカットということが多いのに対して、若人はハイパスということが多いだけだ。(昔の機材は「ローカット」という表示のほうが多かったのだ)





12-1-3 フィルタの特性

    ハイパスフィルタの特性
    図12-1-1 ハイパスフィルタの特性
    以下表記をややこしくしないために、ハイパスフィルタについて説明する。図12-1-1は、カットオフ周波数(fcと表されることもある)が100Hz、スロープ特性が-12dB/octのハイパスフィルタだ。

    フィルタの特性は、カットオフ周波数とスロープ特性によって表されるんだけど、カットオフ周波数=フィルタが効きはじめる周波数、スロープ特性=カットオフ周波数以下をどれくらい小さくするかというものだ。

    実はカットオフ周波数は正確にはフィルタが効きはじめる周波数ではなく、-3dBの減衰となる周波数の事を言うのだ。まあただ、機械的に正確に言う必要がない場合は、100Hzから効きはじめるハイパスフィルタと思ってもよい。

    スロープ特性はdB/octの単位で表される。これはoct(=オクターブ)だけ周波数が変わる、つまり周波数が半分になると、フィルタはさらにどのくらい効果を現しているかということで、図12-1-1の場合は50Hzで、カットオフ周波数の時よりも-12dBとなっているので、-12dB/octのスロープ特性というわけだ。

    理論上、スロープ特性はコンデンサと抵抗だけで出来るフィルタ(一次フィルタと呼ばれる)のスロープ特性、-6dB/octの倍数になるので、-6dB/oct・-12dB/oct・-18dB/oct・-24dB/octとなるにしたがって、急なスロープを持つ、つまり効きのいいフィルタになる。

    不要な音を消去するのなら確かにこのスロープ特性は大きい方がよいのだけど、必ずしも効きのいいフィルタが「音楽的」であるとは限らないのと、効きのいいフィルタには位相問題や音質劣化が伴いやすいので、-18dB以上のフィルタは、音を扱う部分ではほとんど使われない。





12-1-4 その他フィルタ

    他にもフィルタには色々なものがあって、ハイパスフィルタやローパスフィルタなどのある周波数以上(以下)の部分を通さないもの以外に、ある周波数帯だけ通すバンドパスフィルタ(BPF)や、ある周波数だけ通さないバンドリジェクションフィルタ(BRF、完全にその周波数だけ取り去るものではないので、バンドカットフィルタとは言わない)、バンドリジェクションフィルタの中でも特に周波数帯の狭いノッチフィルタ(NF)、ノッチフィルタの複合体のコムフィルタなどがある。

    フィルタの種類
    図12-1-1 フィルタの種類