ver.3.02 2003-04-05

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1-1 マイクについて


マイクが発明されたのは1880年代で最初は炭素の粉末を利用したカーボン型のもの。このカーボン型は現在のマイクに比べれば音は悪いし歪み(ひずみ)も多いので、現在プロオーディオの世界で使うことはないけど、感度がよいのでしばらく前まで電話機に使われていた。そのころの受話器を持ったことのある人には、その重さも分かってもらえると思う。ちなみにこれだけ技術の進んだ今も電話機の音質は1962年に開発された600型電話機(いわゆる黒電話)を目標としているらしい。(まだその音質に追いついていない。)確かに昔の加入電話って(声に限っていえば)いい音していたな。

マイクの正式名称はマイクロフォン(microphone)で、まだよく使われる言い方。「小さい電話」という意味ではなく、micro(微少)なphone(音)を拾うことができるという意味から来ている。英語でマイクといった場合は通常「mic」「mics」と書いたりするが、普通の辞書には載っていなかったりする。あとたまに「mik」と綴ることもあるが、この辺までくると俗語の世界。→9-8-2 英語表記について

1-1-1 マイクの種類

マイクはその構造からいろいろなタイプのものがあるんだけど、エンジニアは通常ダイナミック型とコンデンサ型(以下「型」を省略)というようにおおざっぱに分類して考えている。 ダイナミックとコンデンサとの違いは下世話にいえば、コンデンサの方が音がいい。(特に高域に違いが現れる)コンデンサのメリットはそれだけ。(モノによっては指向性が切り替えられるというメリットもあるけど)後はすべての点でダイナミックに劣る。コンデンサを使うのには以下のような注意が必要なのだ。

  1. 電源が必要
    コンデンサは電源がないといっさい動かない。
  2. 湿気に弱い
    ダイナミックに比べて極端に湿気に弱い。湿気を含むとノイズの増加という形で音に影響が表れることが多い。
  3. 振動に弱い
    すべてのマイクにいえることではあるが、 ダイナミックに比べてさらに弱い。
  4. 高価
    単純な値段比較はできないが、ダイナミックとコンデンサでよく使われるマイクを比べるとやはりコンデンサの方が数倍高い。

ということでコンデンサにとって厳しい条件の多いPAの世界(移動による振動・湿気の多い野外での使用・不安定な電源・盗難や破損の危険などが大きい)では、どうしても必要な部分のみにコンデンサマイクを使い、その他の部分はダイナミックマイクを使うのが普通で、逆に条件をクリアしやすいレコーディングではかなりの割合でコンデンサが使われる。まあ、コンデンサが全然向かない音源などもあるので、一概にコンデンサの方がいいというわけではない。

コンデンサ以外のマイクの分類をするときに、ダイナミック型の中にムービングコイル型とリボン型があるという分類と、ダイナミック型=ムービングコイル型で、リボン型とともにマグネチック式と分類することがあるんだけど、まああまり本質的なことではないのでここではカテゴリに分けず紹介。(カーボン型も意図的に無視)

ムービングコイル型(以下「型」を省略)というのは、ちょうどスピーカと同じ構造をしていて、永久磁石の周りをコイルが覆っている構造になっている。スピーカが電気信号を音(空気振動)に換えるのに対して、ムービングコイルのマイクは全くその逆、つまり音を電気信号に換えるというわけだな。実際、音響特性を無視すればムービングコイルマイクはスピーカに成りうるし、スピーカはムービングコイルマイクに成りうる。(特に後者はトランシーバなどで、スピーカをマイクにするということが実際に使われている)

現在コンデンサ以外のマイクはほとんどすべてこのムービングコイルで、様々なタイプが出ている。次章でそれぞれについてはふれるけど、目にする機会も多いマイクなので、エンジニア志望の人は有名どころは品番まで覚えておいた方がいい。

リボン型(以下「型」を省略)は、その名の通り、リボンと呼ばれる金属箔(アルミが使われることが多いが、その薄さはキッチン用のアルミ箔の1/10位の大変薄いもの)が永久磁石の間につるされている構造になっている。

ムービングコイルや後述のコンデンサの音を感知する部分が「張られて」いるのに対して、リボンが「吊られて」いるので、周波数特性に癖ができにくいという特徴を持っている。ゆえにコンデンサより自然な音がすると好むエンジニアも多いが、コンデンサの音になれていると少し物足りない感じがしないでもない。

永久磁石にある程度の大きさを必要とするため、重く大きいマイクになりがちで、取り扱いにも(特にビンテージマイクは)細心の注意を払わなくてはいけないので、ジャズやクラシックなどの生音を重視する現場でたまに使われる程度で、なかなかお目にかかれないマイク。

コンデンサー(後述のエレクトレットコンデンサ型と区別するため、「直流バイアスコンデンサ」 と呼ぶこともある。)は、導電性薄膜と固定電極を極めて狭い間隙で向き合わせて、静電容量の変化するのを取り出す方式。その構造が電子部品のコンデンサと同じであることからこの名前がある。静電容量を表すキャパシティからキャパシタ型(Capacitor)と呼ぶこともある。(日本ではあまり使わない。)

電極に電圧を加えないと静電気がたまってくれないので、コンデンサにはそのための電源が必要。(この電圧のことをバイアス電圧と呼んでいる。)通常この電源はファンタム電源という形で、マイクケーブルを使って供給されるので、見た目にマイクから電源コードが出ているということはない。
→12-4 ファントム

音質的には、ダイナミックのように振動系を大きく動かす必要がないので(といっても、μmのレベルでだけど)高域特性に優れる。これは導電性薄膜が音域に関係なく振幅は一定という特性によるもので、ダイナミックが高域になればなるほど電気信号に変換しにくくなるのに対して、コンデンサは音域によって得手不得手はない。さらにこの高域特性に加え、構造上ムービングコイルより高い周波数にピークができやすいので一般的には硬質な音色になる。

導電性薄膜と固定電極を極めて狭い間隙で向き合わせて、静電容量の変化するのを取り出す方式というのはコンデンサと全く一緒だけど、 テフロンに静電気を帯びさせて半永久的に静電容量を持たせたものがエレクトレットコンデンサの特徴。というか、テフロン・ポリプロピレン・マイラなどの電気を通しにくい高分子材料を溶かして固めるときに、直流の高電圧を加えた電極ではさんで冷やすと、両面で+と-に帯電する現象が起きるんだが、これを電磁石に見立てて、「電子の磁石」ということでelectron+magnet=electret=エレクトレットと呼ぶ訳なんだな。だからそれを利用したコンデンサ式だからエレクトレットコンデンサというわけだ。テフロン膜を振動膜に使ったものが「膜エレクトレット」といい、固定電極の方に貼り付けたものを「バックエレクトレット」と呼んでいる。

一番大きな特徴は、もうすでに帯電しているので、バイアス電圧が不要なこと。ただし、インピーダンスが高いので、インピーダンス変換のための電子回路が必要となり、その電源が必要となるので電源は必要。ただコンデンサと比べれば遙かに低電圧で小電流しか必要としないので、マイクを使うに当たっての敷居は低くなる。当然製造コストも抑えられるので、価格も安い。さらにマイク自体を小さくできるのもメリット。そのメリットを生かすために、マイク本体と電子回路を別にしたものも多く見られる。

当初はその使いやすさから、民生用のマイク(生録用のマイクやラジカセの内蔵マイクなど)として普及したんだけど、バックエレクトレットが実用化されてから一気に音質が向上し、プロ用のマイクとしても使われている。最初は小型化が可能な特性を活かして、タイピンマイクと呼ばれる身につけて使うマイクや、細身のすっきりしたテレビの音声収録によく使われるような卓上マイクとして広く使われていたが、現在ではそれに加えてレコーディングでの使用にも十分耐えうる高音質の大型マイクも次々とリリースされている。ただ、このようなマイクは「エレクトレット=安物」というイメージを嫌って、コンデンサと表示して販売されていることも多い。

 

1-1-2 マイクの特性

「カクテルパーティー効果」というのを知っているだろうか?別にカクテルパーティーじゃなくてもいいんだけど、(カクテキパーティーはちょっとイヤ)パーティーの会場のように騒がしい所にみんながいるとしよう。で、ぼ〜っとしているときは、みんなは周りのざわめきを何となく聞いているわけだな。で、ここで友人が来てしゃべり始めた。こいつは声のあまり大きくない奴なのだが、みんなはこの友人の声を(ざわめきの中にもかかわらず)さほど苦もなく聞き取ることができるわけだ。

このように人間には、ある程度の音の大きさの差などものともせず、目的の音だけを選択して聞くことができるようになっていて、このことをカクテルパーティー効果という訳だ。

ところが残念ながらマイクにはこのような知能はないわけで、周りのざわめきであろうと、友人の声だろうと、単に音として電気信号に変換するのだ。これでは特定の音を録りたい時に不都合が生じるわけだな。そこで考え出されたのが、音がマイクに入ってくる方向によって感度の違うマイク、つまり「指向性」をもったマイクだ。

ムービングコイルマイク自体の特性は無指向性なんだけど、マイクカプセルの作り方を工夫して指向性を持たせてある。(用途的に無指向性のものはないと言っていい)マイクカプセルに開けられた穴に入った音と、正面から来た音の位相差によってこの指向性を作っている訳なんだな。よってマイクのスリット(網がかぶせてあったり穴があいている部分)を塞いでしまったりするとせっかくの指向性マイクが、無指向性のようになってしまうわけだ。よくマイクの頭を手でくるんで使うボーカリストがいるけど、音響的にみるとあれは大バカ!音の「抜け」が悪くなるに、マイクの指向性がなくなってハウリングしやすくなる。マイクを覆うと他の音が入ってこない感じがするからなんだろうか、プロのミュージシャン(といえる人も少なくなってきたけど)でもこういう使い方をする人が多いのには困ったもんだ。

まあ演出上こういう持ち方をしたいと言われれば、それはそれで仕方ないけど。ちなみにハードコアなんかは、もうそーゆーレベルの話ぢゃなくて、あの抜けの悪い音が音楽の一部だと思っといたほうがいい。あとボイパ(ボイスパーカッション)もマイクを手で覆わないとそれらしい音にならないので仕方ないかな?でも音響屋としてはボイパはマイマイクでやってほしいなあ。マイクが傷むんだよねえ・・・・

で、マイクの指向性なんだけど、大きく分けて3種類あって、それぞれ「無指向性」「単一指向性」「双指向性」とよばれている。

右はまあよくある図なんだが、上方向がマイクの正面だと考えたときに、それぞれが色の付いている方向に「感度」を持っているということを表しているだけなので、色の範囲の音しか拾わないという意味ではないからね。

無指向性

全指向性ともいわれるもので、指向性のないマイク。ラジカセなんかについている内蔵マイクがこのタイプだね。「小川のせせらぎ」とか「会場のざわめき」みたいな「雰囲気モノ」を録る時なんかに便利だ。PAやレコーディングではよっぽど安易なことをやるか、よっぽどレベルの高いことをやるとき以外にはあまり使われることはない。

単一指向性

カーディオイドとも呼ばれるもので、ほとんどのマイクがこのタイプ。マイクの正面(マイクによって異なる)から来る音に対して最も感度がよいマイクで、ある特定の音だけを録りたい時に便利だ。単一指向性のマイクは指向性の「鋭さ」によってさらに「カーディオイド」「スーパーカーディオイド」「ハイパーカーディオイド」「ウルトラカーディオイド」4つに分けられる。カーディオイドが比較的指向性が広く、ウルトラカーディオイド(超指向性とも呼ばれる)がもっとも指向性が鋭い。ちなみにカーディオイド(Cardioid)というのは「心臓の形」という意味。ハートマークをひっくり返したような形をしてるでしょ?数学の世界では「カルジオイド」と読むらしい。r=1+cosθのグラフがこの形になるのだ。

また4種類の単一指向性をみると指向性が鋭くなればなるほど背面への指向性も出てくることがわかる。普通は指向性が鋭ければ鋭い程、目的とする音を録れるんだけど、マイクの背面に不必要な音がある場合なんかは、かえって指向性の広いカーディオイドのほうが目的とする音だけを録れるのだよ。

双指向性

音源からの距離がどのくらいで、オンマイクというかオフマイクというかは厳密にはいえないけれど、だいたい30cm位を境にオンマイクとオフマイクということが多いみたいだな。まあ30cmといってもオンマイクが基本のPAの世界では、どちらかといえばオフマイクになるし、レコーディングの世界ではまだオンマイクのうちになったりする。オンマイクやオフマイクという言い方のほかに「オンにする」とか「オフにする」という言い方をすることもあり、これはそれぞれマイクを音源に「近づける」「離す」という意味になる。

比較的小さな音源に、指向性を持ったマイクを近づけると、収音される音は、オフマイクの時と比べて低域が強調されるという特性がある。これを近接効果というんだな。ドラムなんかをマイクで録ってスピーカから音を出すだけで、音が「太く」なるのはこのためだ。逆にハンドボーカル用に設計されたSM-58のようなマイクでは、オンマイクでの使用を基本と考えて、あらかじめ近接効果分の低域をカットしてある。よってこのようなボーカル用に作られたマイクを、オフマイクで使ったりすると、低音のないすかすかな音になってしまう。

ハンドリングノイズとはマイクを手で持ったときに、手と本体との摩擦で起きる「ごそごそ」といったノイズだ。はなっからハンドボーカル用として設計してあるマイクはその辺を考慮してあるので、PAでの使用ではまず問題にならないが、ノイズにシビアなレコーディングでは目立つこともある。

解決方法マイクスタンドに取り付けて使うか、ボーカリストに「マイクを持つ手を少しでも動かすな!」という無理な注文をつけるしかない。まあハンドマイクは演出上のものと考え、それ以外のときはなるべくマイクスタンドにマイクを取り付けて使おう。(もちろんボーカリストがハンドマイクでないと非常に歌いにくいといった場合はこの限りではない。)

一応JISの規定では

「マイクの振動板を押し込む力が加わったときに、プラスの電圧が出る端子をホット端子とする。」

という規定があるんだけど、これだけじゃマイクに付いてるコネクタの、どの端子がホットなのかわからない。通常PAではキャノンコネクタの2番ピンをホット、3番ピンをコールドにしてあるマイクを使うことが多いんだけど、会館設備やレコーディングでは、その逆が多い。(最近は全体的な傾向として2番ピンがホットに統一されつつあるけど‥‥)

ということで、いろんなところからマイクをかき集めてきた時などは、同じ種類のマイクであっても位相が違っている可能性が高いので、簡単に位相チェックをしたほうがいい。位相チェックは、簡単にやるなら誰かにマイク2本をくっつけて持って、「あ〜」とかなんとか連続した声を少しの間出してもらい、それで1本目だけで音を聞いて、同じくらいのバランスで2本目の音を足す。そうしたときに音量が増えれば正相、逆に音量が少なくなれば逆相だ。でもラフにいっちゃえばマイク自体の位相は、あんまりマイクが近接しているとき以外は、でてくる音が良ければそんなに気にしなくてもいいと思うんだけどね。(B型)

「風」をマイクが「音」と勘違いして、「ぼぼぼ」とか「ぼそぼそ」っといったノイズが出てしまうことだ。一番多いパターンは歌なり声なりを録るときに、人間の息がマイクにかかることによってノイズが出る場合。「ぱぴぷぺぽ」などの声はマイクに強い息がかかりやすくなるのだが、これを特に「ポップノイズ」といっている。

他では野外コンサートなどで自然の風がマイクにあたりこの現象が起きる。根本的な解決方法は風を止めるしかないんだが、まあそんな大それた話は、一般庶民には縁もゆかりもない話なので、普通はまずマイクの位置とか方向で回避できないかやってみる。それでも駄目な場合はウインドスクリーンをマイクにつけてしのぐ。

1-1-3 特殊なマイク

ワイアレスマイクのメリット

  1. マイクを持って自由に動き回れる。

    この特長はいろいろな用途においてかなり魅力的で、極端な場合は音質を犠牲にしてまでもワイアレスマイクを使う場合もある。

  2. マイクケーブルが絡むことが無い。

    マイクを持って猛烈にダッシュしようが、複数の人間がマイクを持って輪になって踊ろうが、(ジャニーズ系のコンサートを想像してもらえれば分かりやすいかな?)ワイアレスマイクはマイクケーブルが絡むことが無い。

メリットはこの2つだけだ。それに対してデメリットはたくさんあるぞ。

ワイアレスマイクのデメリット

  1. 長時間の使用に耐えられない。

    電源が電池なのでこれは宿命だ。(ワイアレスマイク本体に電源アダプタなど付けたらそれこそ本末転倒だ。)

  2. あまり強力な電波を出せない。

    これも電源が電池であることから考えて当然だ。もし仮に強力な電波が出せたとしても、電波法によって届け出や免許を持たずに使える電波は微弱なものに限られている。

  3. 場所によって電波の受信状態が違う。

    これは電波を扱っている以上当然出てくる問題だとはいうものの、ちゃんと動作するかどうかが使う場所で実際に使ってみるまで分からないという厄介な問題。ダイバシティー型の(2本以上のアンテナを使い、一番受信状況のいいアンテナを自動的に選択するシステム)受信器を使い、アンテナの位置を工夫してみることによってかなり回避できるけど、それでも運が悪いと(本当にそうとしか言いようがない)マイクの位置によっては、受信できないこともある。ちなみにこの受信できないところのことを「デッドポイント」という。

  4. ダイナミックレンジが狭い。

    ダイナミックレンジとは簡単に言うと、どのくらい大きい音まで扱えるかという事。電池を電源とするワイアレスマイクは、有線式マイクに比べるとそれほどの大音量でなくても歪んでしまう。一応これを避けるためにワイアレスマイク本体の中には、パッドスイッチやゲイン調整のねじがあるものも多いけど、これはS/Nを犠牲にしてとりあえず音が歪まないようにする消極的な対応方法。ノイズリダクションシステムを内蔵して、少しでもダイナミックレンジを稼ごうとしているものも多い。

  5. 音質が有線式に比べていくぶん落ちる。

    「いくぶん」か「かなり」かは物によって違うんだけど、音質的にワイアレスマイクは、まだまだ有線式にかなわない部分が多い。最近の物は一昔前に比べて格段に進歩しているので、音質面ではかなりのレベルまで来てるんだけどね。ワイアレスマイクは、出来れば使って欲しくないというのが、エンジニアの本音。

  6. 高価。

    当然だけど有線式のマイクと比べると値段が高い。特に音のいいワイアレスマイクは、ばか高いのだ。またランニングコスト(購入するためのお金じゃなくて、買ってからそれを使うのに必要なお金。車でいえばガソリン代や保険代なんか。)の電池代もばかにならない。単純計算で、250円のアルカリ乾電池を毎日2つずつ使うとそれだけで年間18万円の出費になる。

  7. 重く大きい。

    単純に考えても、電池分は重く大きくなる。たかが電池分と思うなかれ、ワイアレスマイクは基本的にはず〜っと手で持っているものなのだ。

  8. 強度的に弱い。

    あの小さい中に電波を発信する回路を組み込んであるもんだから、故障もしやすい。しかも、全然音が出なくなったというような分かりやすい故障でなく、症状が出たりでなかったりするいやらしい故障のしかたが多い。(経験上ね。で、修理に出すと「症状出ず」でそのまま直らずに返ってくるんだな、これが。)

  9. 南極や北極では使えない。

    まあそんな所でマイクを使う物好きはいないだろうけど、これは乾電池があまり低温では使えないってこと。その他汗や息などの湿気にも弱い。(まあ、マイクはみんなそうだけど。)

  10. 同じ周波数の電波を、他で使っている可能性がある。

    法律で、ワイアレスマイクで使用してもよい周波数は決まっているので、混信の恐れが常にある。よくあるのがホテルなどに音響機材を持ち込んだ場合に、下の階とか上の階のように気がつかないところで同じ周波数のマイクを使用している場合。上の階の国際会議に、下の階の結婚式場のおやぢの「マイウエイ」の歌声が紛れ込んでしまったりした日にゃぁ悲惨だ。

以上のようなことから、プロの音響業界では、まだまだ有線マイクのように気軽に使えるものではないけど、使う側からしてみれば1度使ったら結構病みつきになるワイアレスマイクなので、ワイアレスマイクのオーダーはますます増えてくるだろうな。あ〜、やな時代だ。

閑話休題、この手のマイクには2本のマイクの角度を、スイッチで切り替えられるものも多くあって、「雰囲気モノ」を録るにはなかなか都合がよろしい。MS方式のマイクは2本のマイクを1本にしたというよりも、ちゃんとセッティングするのが結構難しいMS方式のセッティングを、楽にするための意味合いが強い。よって使われ方もプロの現場での使用が多く、マイクの値段も高価なのが普通だ。

比較的よく使われるのは、レコーディングでドラムなんかのアンビエンス(部屋鳴り)マイクとして使ったり、演劇関係などで、ステージのかまちの前あたりの床に張り付けて、マイクがない様に見せるとかの場合かな。

音源に取り付ける関係で、コンタクトマイクってのは小さく軽く作られているので、通常のマイクと比べると音質面で少し見劣りしてしまう。だからこの手のマイクがよくライブなんかで使われているのを見たとしても、ステージ上での演奏者の動きを、比較的自由にする所に一番のメリットがある訳で、そのマイクが音質的に優れているわけではないことが多い。だからライブステージのように動きまわる必要がないレコーディングでは、コンタクトマイクを使う必然性は、全くない。



1-1-4 マイク本体のアクセサリ

 

最近はミキサが安価なものでも高性能になってきたので、マイクに付いているこの機能を使う人はあんまりいなくなってしまった。「とりあえずマイクに入ってくる音は全部ひろっといて、不必要な部分はミキサのほうでカットすればいいじゃん」という発想だな。とはいうもののベテランエンジニアの中には、このイコライジングスイッチとマイクの置き方で音作り(それもかなり高度な)をしてしまう人もいる。はっきり言ってあれは「職人芸」だな。